父親が借金を多く抱えていたため、父親の相続を放棄しました。その後、父方の祖父が亡くなったのですが、祖父も借金を多く抱えていたため、相続をしたくありません。
この場合、祖父の相続を改めて放棄する必要があるのでしょうか?
父親の相続を既に放棄していても、改めて祖父の相続を放棄する必要があります。
我が国の民法では、祖父母が亡くなる前に親が死亡していた場合、子は親の代わりに祖父母の相続人になります(民法887条2項)。
これを代襲相続といいます。
代襲原因には、親の死亡のほかにも、相続欠格(民法891条)や廃除(民法892条)があります。
他方、親が祖父母の相続を放棄していた場合、子は代襲相続をすることができません。
では、祖父母の相続が始まる前に、子が親の相続を放棄していた場合、子は祖父母の代襲相続人になるのでしょうか。
下級審ですが、この点について判断した裁判例があります。
山形地裁平成17年3月15日判決は、「子は、被代襲者である親の相続を放棄した場合であっても、被代襲者の子で、被相続人の直系卑属で、かつ被相続人の相続開始時に存在するとの三つの要件を満たせば、相続放棄された親を代襲して祖父母の相続人となると解すべきである。」と判示しました。
この判決に従えば、子が親の相続を放棄していた場合でも、子は祖父母を代襲相続します。そのため、祖父母の相続を放棄するには、改めて祖父母の相続放棄手続を行う必要があるでしょう。
両親の相続を既に放棄しているからといって、祖父母の相続を放棄しないでいると、思わぬ借金を抱えてしまうかもしれません。相続には、このように大なり小なりリスクが内在しています。
このようなリスクを回避するためにも、相続が生じた場合には弁護士に相談することをお勧めいたします。